修道学園通信 vol.117
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23102096The Shudogakuen News vol.117   進路部長 遠藤 伸彦東京大学既卒生出願8.55.44九州大学既卒生出願9.86.212入試年度2014~192020~242025現役出願15.310.813入試年度2014~192020~242025現役出願17.818.812ている。……SNSには数学の難易度の高さを書き込む受験生が相次ぎ「今年の東大理科入試、数学と化学が史上最難でえぐい もう英語くらいは許して」「数学と化学が難化してる」「数学=ここ数年で最難 理科=化学の記述量多すぎ」「今年数学難化なら数弱の俺的には差が大きくつかなそうで助かるかも」「数学が難しいと英語が得意な帰国(子女)ばかり合格するのマジでクソシステム」「英語勝負えぐい」といったコメントが続々と書き込まれた。国語も「むっず」「おわた」「小説たぶん貰えても 5 点だわ 25分でやるにはしんどかった」「漢文は難しすぎる」と敗北感を滲ませる受験生が相次いだが、国内最難関とされる理科三類を目指しているという受験生からは「国語簡単すぎ」といった声も寄せられた。……また、教師を名乗るユーザーや、入試問題に精通していると思われるユーザーからは、数学の問題について「前年と比べて大きく難化しており、過去最高の難易度と言えるでしょう」「今年の東大数学ぱっと見だけどここ10年くらいで 1 番難しいんじゃないかと感じた」といった書き込みも目立った。総合出願23.816.217現役出願11.712.813総合出願27.725.024現役出願91.082.274.0京都大学既卒生出願6.85.012難関10大学既卒生出願50.533.457総合出願18.517.825現役出願17.514.217総合出願141.5115.6131※ 東京大・京都大・大阪大・東京科学大(旧東京工業大)・一橋大が「超難関 5 大学」と、 それに北海道大・東北大・名古屋大・九州大・神戸大を加えて「難関10大学」と呼ばれ現役出願26.221.830[現役合格者数] 東大・京大現役合格者数東大・京大・国公立医学部医学科現役合格者数 超難関5大学現役合格者数 難関10大学現役合格者数 国公立大学現役合格者数大阪大学既卒生出願10.35.811国公立医学部医学科既卒生出願31.718.620総合出願27.820.028現役出願49.242.849総合出願57.840.450現役出願222.2.211.22142025年度514103096[ 6 年10月受験の記述模試理系上位の医学部志望者数]2014~20231.12.46.412.23.9超難関5大学既卒生出願28.519.429国公立大前期出願者既卒生出願137.596.6104総合出願77.762.278総合出願359.7307.83182024年度4141125922014~23年度平均7.611.515.733.493.7受験年度 2025 5 位以内 10位以内 25位以内 50位以内 現役合格20243491310 共通テストになって 5 年目の2025年度入試は、新課程になって初めての共通テストであり、以下の点が変更された。①「情報」の導入と、それに伴って合計点が900点から1000点へ。②「国語」で現代文が 2 問から 3 問に増え時間が90分へ10分延長。③「数学ⅡB」が「数学ⅡBC」に変更され時間が70分へ10分延長。④地歴・公民科における新科目の設定。 特に新科目の「情報」は、全国の高校で教えているのが専門的に教えている教員ばかりではないため、出題内容によっては不公平が生じることが懸念されるなど注目されていた。結果的には、「情報」にも特有の知識を必要とする問題は出題されず、「国語」においても試行問題で出題されていた契約書などの問題もなく、昨年出題された選択肢が 5 つの問題も出題されなかった。また、昨年のこの報告にも書いたリーディングの単語数も第 1 回共通テストからの数が 5381 → 5850 → 6014 → 6292 → 5612 となり昨年より 1 割程度少なくなるなど、試験科目増加や時間延長による負担増加への配慮が見られた。予備校の予測では、平均点は得点率が昨年よりも文理とも 2 %程度上昇し、予備校が東京大学の合格ボーダーラインとした得点率88~90%付近の受験生の数も昨年の1.5~2.0倍弱に増加した。 話を本校の入試結果に移す。下の表は、コロナ拡大前の 6 年間と、コロナ拡大から 5 類扱いとなった2023年度 6 年生が受験した2024年度入試までの 5 年間と、2025年度入試との、主要国立大学などの前期出願者数を比較したものである。2020年度~2024年度の入試は、コロナは勿論、2021年度入試からの共通テストの導入や2025年度からの新課程入試などを避けて、全国的に「地元志向」「現役志向」が進んだ時期であった。本校でも志望を極端に下げるような動きはなかったものの、上位層でも後期で合格すれば進学する動きは見られ、浪人率も学年生徒数の約50%であったコロナ以前から約40%へと、10%程度下がった。 現役生を見ると、超難関 5 大学の現役出願者はコロナ前に戻り、国公立前期出願者数も全体でコロナ期以前に戻りつつあるなか、医学部医学科がコロナ以前よりも増加しているのが目につく。一方、「東京大学よりも京都大学に」という傾向や、回復しつつある国公立大全体の出願に比べて難関10大学の出願が大きく減少している背景には、後述する医学部志望者の増加と並んで「安全志向」の継続を否定することはできないであろう。既卒生については、共通テストが新課程になって旧課程と 2 種類の問題が作られる教科もあって結果的に既卒生が不利になる可能性もある中、超難関 5 大学、難関10大学ともにコロナ以前を上回る出願となっており、果敢にチャレンジしてくれたと考えている。[主要大学前期出願者数] 次の右の表は現役合格者の数を比較している。東大京大現役合格 5 人は2014年度以降では 3 番目の少なさであり、残念な数字であることは認めざるを得ない。他方で国公立医学部医学科現役合格 9 人は、昨年の10人に次いで2014年度以降 2 番目の数字であり、結果、東大京大医学部を合計すると現役生についてはコロナ以前の平均を上回る合格者数となっている。超難関 5 大学に合格する力を持っている現役生が医学部医学科を受験して合格していると考えると、国公立大学全体の現役出願者数に大きな減少はなく、合格者は増えている反面、超難関 5 大学を含めた難関10大学の現役出願者数や合格者が減っていることも説明がつくと考える。 東大京大の現役合格者の数は残念であるが、今回の2025年度東大入試にはある特徴がある。それは合格した 3 人が、既卒生を含めて全員文系だということだ。本校から理系が東大に合格しなかったことは手元にある資料で調べられる1988年度入試以降初めてであり、個人的には史上初めてだろうと推測している。 東大の 2 次試験 2 日目が終わった 2 月26日の夕方、産経新聞系の産経デジタルが運営するネット上のニュースサイトには次のような記事が掲載されていた。 本校のある理系東大受験生も「初日の数学でショックを受けたのか、隣の受験生は 2 日目に欠席していた」と話していた。 予備校が発表する講評では、化学については多くの予備校がレベルは「難化」で量は「増加」と書いており、ある予備学校は「昨年と比較すると計算量は減少したが、各設問の問題文が非常に長く、また説明・論述問題が多くなったため制限時間内で解答を作るのは、かなり厳しかったと思われる。」と書いている。数学については「例年並み」としている予備校の方が多いが、本校のある数学教員は「理系の数学は、確かに問題のレベルは全問が『中の上』くらいで、特に解きにくい問題が並んでいるわけではないが、逆に言うと『これはとれるが、あれは無理』という割り切りもできず、全問解けそうに見えて、思考のヒントになる誘導がない問題も多く、計算は複雑でなかなか答えに到達できず、焦って計算ミスなどすると、全問に手をつけて『 1 問も解き切れた問題がない』状態で終わる出題だった。」と評している。 1 問 1 問の難易度と、100点が取れるわけではない入試において、部分点を含めてトータルで制限時間内にどのように点が取りにいけるかは必ずしも一致しない「難問」だったのではないかと推測している。 実際、東京大学が公開したデータによると、前述のように共通テストの平均点が上がり、東大のボーダーライン付近を取った受験生の数は昨年に比べて大きく増えていたにもかかわらず、合格最低点は前年に比べて550点満点で 文Ⅰ…プラス5.2678点、文Ⅱ…プラス0.0067、文Ⅲ…マイナス9.1589、理Ⅰ…マイナス5.2444、理Ⅱ…マイナス0.9944、理Ⅲ…マイナス11.8078と理系では 3 科類とも下がっている。更に、 1 人だけ合格者を出した高校の数も、今年度の東大入試を特徴づけると思われる。週刊誌の高校数を数えると、 2024年度…197校  2025年度…148校と昨年の 3 / 4 に減っている。これは、合格ラインを突破するに十分な力がある受験生には突破できるが、部分点などを積み重ねてどうにかギリギリ合格ラインに到達できればチャンスはあるという受験生には厳しいレベルの入試問題であったことを示す数字だろう。 では今年度受験した理系生徒に力がなかったのであろうか。全員受験している高 3 対象の模試にはマーク形式の共通テスト模試と記述模試があり、それぞれや 2 つを総合したドッキング判定でもA~Eの判定が出されるが、それだけではなく 2 つの模試を総合した結果から予備校独自の計算方法で合格可能性を90~10の数値で表す「ポイント」が算出されている。昨年10月の共通テスト模試・記述模試が終わった段階で、過去の本校の先輩の「ポイント」のデータを利用して算出したところでは「 1 浪までで東京大学に合格する可能性50%以上」の生徒が 9 人( 5 人が理系)、75%上の生徒が 6 人( 4 人が理系)いた。理系の生徒に合格する力がなかったとは考えていない。全受験生が同じ条件で受験していることは勿論承知の上ではあるが、「今年度のような出題でなければ……」という思いをぬぐい去ることはできない。ある理系生徒は「自分も初日に数学ができるなくて大きなショックを受けたが、 2 日目に何があるか分からないと気力を奮い立たせて最後まで受験した」と言っていた。過去最難の可能性もある問題に最後まで諦めず取り組んだ彼らの真摯な姿勢に敬意を表したい。それだけに、どんな問題であろうとも突破して合格する力をつけてやれなかったことが残念でならない。 右の表にあげるのは 6 年生が10月に受ける記述模試の理系上位に占める医学部医学科志望者の数の比較である。昨年・今年と過去12年で 1 番・ 2 番の現役医学部医学科合格者数となっていることはすでに指摘したが、前期で医学部医学科を受験する現役生の数がコロナ以前を上回っていように、本校の理系上位が医学部医学科を目指す傾向が高まっていることが背景にあることは否定できない。先が見えない現在の世の中の状況やコロナ禍での医療の重要性などから、コロナ禍が広がった2020年度まで下がっていた医学部人気はその後再び高まっていると予備校は分析している。生徒からすると、医者は、仕事内容や将来における重要性の大きさが他の仕事と比べて最もイメージしやすい職業と言えるだろう。それだけに、他の職業をしっかり検討することなく、きっちり勉強を進める覚悟のないまま医学部医学科を目指す選択はしてほしくないが、文理選択に向かって将来の職業などを考えさせ始める 3 年・ 4 年の段階で、ここ 3 年の卒業生が進路関係を含めた多くの学校行事を行えず、学年全体が集まる集会を開くことも躊躇せざるを得なかった状況にあった影響は全くなかったとは言えないと個人的には感じている。 予備校関係者からは、ここ数年の浪人生にはギリギリのところで踏ん張りきれない傾向が見られると耳にすることが多い。コロナ禍で学校から「少しでも体調が悪ければ、無理をしないで休んで下さい」とアナウンスされ続ける中で学校生活を送ってきた生徒には、こちらが考えている以上の影響があるのかもしれない。ある 6 年担任からは、東大見学ツアーが実施できず「自分で実際にその大学に行ってそこの空気を吸い、自分と同じ校舎で勉強してその大学に合格した先輩から話を聞いて『俺は絶対ここに来る』と腹をくくったことのない受験生が、 6 年秋の押し詰まったギリギリのところで『自信がない』と言い始めるのを踏みとどまらせるのは、担任の言葉では限界がある」との声が聞かれた。コロナ以降、後期で北大・九大に出願して合格すると、浪人せずに進学する傾向は続いている。また、中 2 の春に 3 カ月の休校を経験した77回生は、学校が再開された後も「食事は前を向いて」「黙食」「距離を取って」「向かい合って話さない」などの指導を受け続け、友人の輪をどんどん広げていく行動ができなかったこともあって、上級になっても仲のいい友人と小さくまとまる傾向があり、敢えて大学で同じ分野の勉強をしようと考えている生徒を近くの席にするなどして、お互いに刺激し合ったり教え合ったりしやすくする工夫をしたと 6 年の担任からは聞いている。2023年 5 月にコロナが 5 類扱いとなって学校行事の多くもコロナ以前に戻っているが「これでコロナは終わり」というわけにはいかないことを肝に銘じなければならない。 生徒の志望からは、コロナの影響からの脱却がかなり進んでいると感じることができる。結果の数字については残念で申し訳ない部分もあるが、生徒たちは果敢にチャレンジしてくれた。一方、表からは見えにくい部分でコロナの影響も意外と残っていることも浮かび上がってくる。小学 1 年生になったばかりの2020年 4 月から 3 カ月のコロナ休校を経験した現在の小学校 6 年生が来年2026年 4 月に中学に入って来る。コロナの影響を見極めつつ、コロナ後の指導を再構築しなければならないと考えている。2025年度 大学入試結果報告

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