7The Shudogakuen News vol.116遠藤 伸彦(進路部長)東大見学ツアー赤門前にて若本祐一先生講義れた「選択とは、自分が選んだ選択肢以外を捨てること。自分の可能性を最も捨てなくていいのが東大。」「自分にとって大切なことは自分で決断しなければならない。」「自分がやっていることを正解にする方法をとるべき。」など、言葉を扱う仕事をされているだけに、多くの言葉が生徒の心に響いていた。また、必ずしもずっといい成績を取り続けていたわけではないとか、班活動で疲れた時も毎日少しでもいいから予習・復習はするという最低限のことはしようとしていたなど、生徒のモチベーションを上げるお話も多く聞くことができた。話の中には生徒がよく知っている企業のCMの話などもあった。生徒は切れ間なく質問をし続け、それに対し、笑いを巻き起こしながら瞬時に答えていただき、生徒はプロの力に驚いていた様子であった。「修道は難関大を目指す仲間がたくさんいるから頑張れる」という言葉もあり、学年の担任の一人で引率していた白砂教諭が修道の同級生の同じ野球班で、一緒に班活動も勉強も頑張った仲と聞き、更に同席された昨年の講演者の石田弁護士も同級生と、生徒はここでも「つながり」を感じることができたと思われる。 2日目は朝、ホテルから歩いて東大に行き、安田講堂で写真を撮るなどした後で林先生の講義を聞き施設の見学を行った。本郷キャンパスは、駒場キャンパスに比べると外見は古い建物が多く、生徒は東大の歴史を感じていた。林先生は、実は研究が進んでいない睡眠の研究をされている。夢を見る時の睡眠がレム睡眠であるが、その時には脳で急激な血流の上昇が起きており、老化するほどレム睡眠の割合が減っていく。レム睡眠とノンレム睡眠を切り替えるスイッチ機構が解明されると睡眠障害などへの対処が可能になり、レム睡眠をコントロールすることで認知症などへ対処する道を研究しておられる。 生徒たちは講義の後で研究室を見学した。睡眠の研究のために線虫や魚を飼育してある部屋を見学したり、説明を伺ったりした。生徒の感想には、多くの種類の高価な顕微鏡に驚いたとか、説明して下さる院生と思われる方が、生徒の言葉を借りると「楽しそうに」説明をして下さり、研究に対する熱意が感じられたというものがあった。 今年度の東大ツアーを通じて最も感じたのが「つながり」である。突然声をかけさせていただいたにもかかわらず快く東大内部の見学を可能にして下さった若本先生・林先生や研究室の皆様、OB講演会のためにパワポなどを用意していただいた串先輩、人選から設定まで毎年お世話いただいている関東同窓会の皆様など、感謝の言葉も見つからない思いである。 多くの方に応援していただいて得ることができた今回の大きな刺激を、高2以降に発展させていくことが恩返しになると考えている。 2024年8月22日(木)~23日(金)、昨年から再開された東大見学ツアーを行った。昨年お世話になった先生はお二方とも学会等の都合で対応が難しいとの返事が届き、東大内部を見学させてもらうには東大の先生に引率をしていただく必要があるため、新たに本校OBの東大の先生を探すことになった。昨年お世話になった先生に相談すると、出身大学や出身県の話はすることはあっても高校まではなかなか話すことはないとのことで、インターネットで探してみたものの、ネット上の研究者の情報には出身高校まで記載されているものはなく、本校の卒業生名簿のデータも現在のデータとは限らず、見つかったとしてもその日程のご都合も不透明で、途方に暮れる思いであった。 新たに声をかけさせていただいたのは、本校で担任をしていた教員が東大で教えておられることは知っていたものの連絡は取っていなかった若本祐一先生(49回生)と、以前東大ツアーでお世話になっていた広島学院出身の村田茂穂先生から修道卒業の先生として紹介いただいていた林悠先生(51回生)であった。お二方とも本校出身という確実なデータがないために失礼があってはと思いながら連絡をさしあげたところ、2日後には快諾をいただき、胸をなで下ろす思いであった。ネットを探せば何でも見つかるかのような世の中になっているが、今回のお二方が見つかったのは、ともにネット上ではみつけられない「つながり」による。途方に暮れた2日後には「後輩のためなら」と言っていただける方が2人見つかり、OBの皆様方の母校と後輩を思うお気持ちと、「つながり」の力を思い知らされた気持ちであった。林先生は最近東大に移られており、村田先生が出身高校まで含めていろいろな話をされていて、その紹介がなければ出身校を知ることはなかったかもしれない。 初日にお世話になることになった若本先生は、東大のキャンパスのうち、赤門や安田講堂で知られる本郷キャンパスではなく、大学1年生・2年生が授業を受ける駒場キャンパスで教鞭をとられており、16回目になる東大ツアーで初めて駒場キャンパスを訪問することになった。若本先生からは、同じ遺伝子をもつ菌の中に抗生物質に対する耐性があって生き延びるものとそうでないものがいるように、生物の個体間には「ゆらぎ(バラツキ)」があり、それが環境への適応につながっていくという研究の講義を伺い、その後はグループに分かれて研究室を見学した。生徒からは「ホコリが入らないように厳重に管理されている部屋や精密機械や薬品が並んでいる研究室を見学して、大学での研究の凄さを実感した」といった感想が出された。 駒場キャンパスから宿舎の東京ドームホテルに帰るには、乗降客が多いターミナル駅の1つである渋谷で乗り換える必要があった。50人以上が一列で移動することは不可能であり、生徒がどれだけ自分たちで考えて標示を見ながら行動できるかにかかっていた。実際に歩くと周りはとても早足で、利用客に視界を遮られて思ったように進めなかった。予想していたよりも緊張する乗り換えであったが、生徒も機敏に行動し全員が無事ホテルに着くことができた。 初日の夜は、関東同窓会の先輩方が毎年OB講演会を設定してくださっている。今年は64回生で、大手広告代理店でコピーライターをされている串大輝先輩のお話であった。先輩の言わ行事報告
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