修道学園通信 vol.111
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The Shudogakuen News vol.11142022年度 大学入試結果報告進路部長 遠藤 伸彦 昨年の第1回共通テストでは事前の予想に反して平均点が上がった。難化確実と言われた第2回であったが、前身のセンター試験を通じて7科目の平均点が史上最低とも報道される「超難化」の入試となった。 史上まれにみる平均点の低さに、予備校のリサーチの判定もどこまで確かなものと考えていいのか判断が難しく、出願大学の決定に迷うケースも増えることが予想された。不安になっている生徒や保護者に対しては、担任・学年側が自信をもって対応しなければ不安を増大させることになる。今回の共通テストは全国的に例年のようには得点できておらず、合格最低ラインも例年を超えることはないであろうと想定し、平均点が上昇した昨年は除外して、一昨年までの3年間の合格最低点の平均を超えれば合格できると考えた。合格最低点はほとんどの大学がホームページで公開している。2次試験の問題を数年分解いてみて、1か月後に取れそうな点と今回の共通テストの点を加えたものが一昨年までの3年間の合格最低点の平均を超えると思えるかどうかを出願の判断基準とした。また、非常に厳しい判定が返ってきた生徒には、担任を含めた学年から、それまで想定してた志望大学・学部以外の大学・学部にも広く目を向けて出願大学を検討する提案も行われた。共通テスト直後は沈み込んでいた生徒も、全国のほとんどの受験生が共通テストで予想を大きく下回る得点しか取れておらず、誰もが2次試験勝負だと判明してからは気持ちを立て直して前向きに取り組んでいた。 結果的には、東大・京大・阪大・一橋大・東工大の超難関5大学の現役合格23人(過去4年の平均14.5人) 、それに北大・東北大・名大・神大・九大を加えた難関10大学現役合格47人(過去4年の平均32.75人)という好成績を残すことができた。そして何より特筆すべきなのが国公立大学現役合格142人である。ここ4年、国公立大学現役合格は103人、92人、101人、97人と1学年の定員が300人になった2005年度入試以来最多やそれに近い数値を出していたが、今年度入試ではそれを大幅に上回る合格者数となった。 それは決して妥協して志望を下げて合格しやすい大学・学部に出願した結果ではない。上記の難関5大学には49人(過去4年の平均41.75人)、難関10大学には122人(過去4年の平均89.0人)の現役生が出願しており、広島大学への現役出願者58人も過去4年の平均87.75人と比べて多くはない。添付の合格者一覧を見ると、山口大学、広島市立大学あたりの合格者が例年よりやや多いが、合格した大学に特に顕著な偏りは見られず、全国各地の大学に合格者が出ている。つまり、例年の約1.4倍の国公立大現役合格者数は、全国の大学を広く検討対象とし、受験して合格した結果であると言うことができる。 また、表の合格者の中には中期・後期試験の合格者が35人含まれており、これは例年の約1.5倍にあたる。つまり、思ったように共通テストが得点できない中、行きたい大学には合格しそうにないから後期試験の出願を避ける動きになりそうなとところを、しっかり可能性を検討して出願し、対策の勉強をして最後まで受けきったことの証明と言えるだろう。 次の表はBコースから難関大に合格した現役生・既卒生の一覧である。文系・理系Bコース(現役生)文系・理系Bコース(既卒生)京都大・工(1名)大阪大・工(1名)東工大・工(1名)北海道大・総理(1名)東北大・理(1名)名古屋大・工(1名)神戸大・経(1名)九州大・工(1名)九州大・芸工(1名)筑波大・情報(1名)早稲田大・スポーツ科学(1名)早稲田大・国際教養他(1名)北海道大・法(1名)東北大・法(1名)大阪大・工(1名)九州大・工(1名)広島大・医医(ふるさと枠)(1名)広島大・医医(3名)山口大・医医(1名)高知大・医医(瀬戸内枠)(1名)自治医科大・医医(1名)筑波大・人文(1名)筑波大・生命環境(1名)慶応大・総合政策(1名)早稲田大・人間科学(1名) 特に現役生は東大・一橋大以外の難関10大学に合格している。共通テストの得点が想定していた得点に届かず2次試験勝負の状況の中、弱気にならず、よく出願し、強い気持ちで最後まで勉強した成果と称賛したい。 今回受験した74回生は模擬試験などでも良好な結果を残してきており、それだけに共通テストの取れなさ具合は大きなショックだったと想像される。そこから、やはりそれまでの志望大学を受験することで気持ちを固めたり、担任から提案された大学も含めて出願大学を再検討したうえで、ある者はそれまでやってきた勉強に拍車をかけて2次試験で取り切る腹をくくり、ある者は気持ちを切り替え、全員がそれぞれの取り組むべきことを最後までやり切った結果が国公立大現役合格142人である。 共通テストで想定していた点が取れなかった状況で難関大の2次試験勝負に臨む決心をしたり、新たな選択肢を含めた検討を提案された時、前向きに取り組むために必要なことは何だろうか。それは生徒と教員の間の信頼関係だと考える。共通テストが思ったように取れず「志望を下げた方が…」と弱気になった時に「お前ならいける。ずっとお前を見てきた俺が言うんだらから大丈夫。」と言われて「よし、頑張ろう!」となったり、担任から「○○大も選択肢に入れて考えてみてはどうか」と言われた時に「何でですか!」ではなく「じゃあ考えてみようか」となるのは、その教員との間に信頼関係があればこそだろう。 74回生は生徒と教員の関係が非常によかったと聞いている。2次試験まで学校に来て教室で勉強している間、毎日午後3時になると生徒の気分転換と教室の換気を兼ねて、6年の階の廊下ではCDでラジオ体操が流され、生徒は教室から廊下に出てラジオ体操第一と第二をするのが日課となっていた。やがて体操カードが作られ、生徒たちは楽しそうに自分でゴム印を押していた。あるグループは「万歳」の形から両腕を降ろして「気をつけ」になる体操を5~6人で少しずつずらして行い、正面から見ると千手観音が体操をしているように見えるパフォーマンスの精度を日々上げていく努力をしていた。体操に参加する生徒も徐々に増えていったと感じられた。このようなことに対しても「俺らは小学生じゃない」というスタンスを取ることはできるだろうが、教員側の提案を受け入れて楽しみに変えていく姿は、生徒と教員の関係を象徴していると感じられた。 最後に東京大学について触れておきたい。ある予備校のホームページでは、今年度の東大入試問題の難易度は、英・数・国が文理とも「難」、理・社はほとんどが「例年並」であった。今年度の受験生の中には、既卒生も含めて「合格してくれれば…」という生徒が何人もいたが、東大の「難」を突破することはやはり容易ではないことを思い知らされる結果となった。共通テストであと数点、2次試験で計算ミスしなければ…という生徒もおり、非常に残念である。「お前が通らずに誰が通る?」という力つけさせることが必要であると痛感している。 今回の大学入試は、共通テストが史上最難とも言える結果になったことをうけて、生徒にとっても教員にとっても精神的に非常に厳しい入試であった。が、そのような状況下で最後に支えとなったのは生徒と教員の信頼関係であったと考えている。現在も続くコロナ禍を含め、厳しい状況にあっても常に最後まで生徒を支えられる学校でありたい。

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