The Shudogakuen News vol.10942021年度 大学入試結果報告進路部長 遠藤 伸彦初めての共通テストとコロナ感染に翻弄された入試であった。超難関5大学(※)合格19人、難関10大学合格38人という上位の大学の数字は非常に厳しいものである。特に東京大学合格1人(現役1人)は過去の数字を大きく下回っており、責任を痛感している。この結果の背景には出願者の減少がある。昨年度入試では、難関10大学の前期出願者は前年までの6年間の平均と比べて現役は約9割、既卒生は約8割であったが、今年度入試では現役出願者が一昨年までの6年間の平均の約6割、既卒生は5割を割った。既卒生については、浪人した生徒が約20%減少したなかで、一昨年までであれば超難関大を目指して再チャレンジしていた層の生徒が、後期試験で合格すると、積み上げた受験勉強では初年度の共通テストに対応することが難しくなると考えて、現役進学したことの影響は小さくない。最終的に今年東京大学を受験した昨年度の卒業生が1人であったことはその象徴である。一方で、そのような状況下でも第一志望を貫いた既卒生の合格率は高く、京都大学は2年連続で4/4の合格率であった。現役生の73回生については、彼らの6年間を「大学入試改革」と切り離して述べることはできない。彼らが小6の年にセンター試験に代わる「新テスト」導入が公表された。入学後「君たちは大学入試が変わる学年だ」と言われながらも実態は見えず、中3の時に国語と数学に記述式を導入することと、英語で民間の検定試験を活用することが発表された。高2の6月に具体的な問作方針が発表されたものの、英語民間試験の受験機会の公平性や記述式の採点方法などについて反対の声があがり続け、高2の11月と12月に英語民間試験活用と記述式導入が見送られた。やっと最終的な姿が確定したのは高2の1月であったが、「さあ、やるぞ!」というタイミングで、コロナ感染が拡大し、3月~5月の休校を余儀なくされた。予備校関係の方からは「修道生は最後の模試が終わってからが勝負」とか「修道生の模試の結果は当てにならない」などの声をいただき、我々教員も「試験の前日まで伸びる」と言ってきている。夏休みまでに苦手科目をつぶし、秋までに個別試験(2次試験)の過去問もある程度解いて「2月までには何とかできる」という見通しを持ったら、秋の大学別模試の結果がどうだろうと、チャレンジするつもりでセンター試験に取り組む、というのが先輩たちが「踏襲」してきた戦略である。誰かに相談することも難しい休校という状況では、夏を目指して苦手科目の克服を一人で進めるのは容易ではなかったろうし、夏休みが平日4日になったことで普段はできない勉強に手を付けることも難しかったであろう。また、共通テストは「変わる」に加え「難化確実」とも言われ続けていた。受験が近づいてくるにつれ、どんな内容かは分からないが難しいのは確実な問題を解くことから逃げられない不安と、コロナ感染が拡大するにつれて「場合によっては本学の入試は……のように変更します」という情報が次々に出される不安な状況の中で、「早く受験を終わらせたい」という気持ちになったことは想像に難くない。秋の模試までの志望では例年と極端な違いは感じなかった。が、共通テストは蓋を開けてみると平均点は上昇していた。予備校の集計では得点率80%以上が減って80%以下が増えるという分布のアップであったため、難関大を狙っていた生徒には「平均点アップ」「易化」と報道されている割には自分は思ったほどには取れていないという状況になり、選択は一層「現実的」な方向に向かったと考えている。結果的に、難関10大学の出願は減少する一方で、広島大学には現浪合わせて42人が合格し、現役合格33人とともに史上最多となった。また、現役の国公立大全体の合格者97人も、過去3年の103人、92人、102人と比べても遜色ない数字となっている。史上初めての成果も出ている。国公立大学医学部医学科の現役合格5人は、過去3年の5人、5人、6人と変わらない数字であり、とりわけ、理系Bコース(昨年までの理Ⅳ)の生徒が初めて広島大学医学部医学科に現役合格したことは高く評価したい。昨年は1浪で初めて合格者が出ていたが、今年はそれを上回った。個別試験の科目の力を重点的につけていき、共通テストのビハインドを跳ね返しての合格であった。私立大学については、都市部の大学が出願者を大きく減らした。大手予備校の集計では早稲田大・立命館大が16%減、近畿大が13%減となっている。コロナに加えて、早稲田大学では政治経済学部が共通テスト数学ⅠAの受験を必須にするなど、入試改革が行われたことが原因の1つに挙げられている。来年度も同じ状況だと考えるべきではないだろう。多くの高校では、生徒に高い志望を維持させることにご苦労されていると聞く。他の学校の先生から「どう指導すれば『模試の結果はおいておいてチャレンジしよう』と思ってくれるんですか?」と聞かれることも珍しくない。が、どんな問題が出るか分からないが難化は確実と言われた共通テストが修道生の出願に与えた影響は、現役生にも既卒生にも大きかったと言わざるを得ない。今春卒業した73回生は、私自身、高校3年間授業を受け持ってきたが、高2からは別人のような授業態度になり、その変貌ぶりには驚かされた。初めての共通テストを受ける不安に加え、コロナで入試がどうなるのかという不安と戦いながらの受験勉強であったろう。夏休みは平日4日、うち2日は模試という状況でも不平を一切言わず彼らはよく学校に来た。それだけに、コロナによる休校により、先輩から続いてきたパターンでの受験勉強を進めさせてやることができなかったのは残念でならない。もちろん、どんな状況でも結果を出させる指導に至っていなかった部分は大いに反省しなければならない。これまで修道生が経験したことのない条件下にありながら、73回生たちが自らの力を見極め、「現実的」な選択をした入試結果であると評価したい。文系B・理系Bコース(現役生)文Ⅱ・理Ⅳ(既卒生)北海道大・水産(1名)大阪大・理(1名)九州大・工(1名)広島大:医医・薬(各1名)慶應大:環境情報(3名) 総合政策(2名)早稲田大:教育(1名) 商(1名) 人間科学(1名) 社会科学(1名) スポーツ科学(1名)京都大・医健康(1名)東京工業大・環境(1名)九州大・法(1名)広島大:医医・歯(各1名)琉球大・医医(1名)長崎大・歯(1名)九州歯科大(1名)富山大・薬(1名)慶応大:薬・理工(各1名)早稲田大・創造理工(1名)上智大・経(1名)産業医科大(1名)※北大・東北大・東大・名大・京大・阪大・九大の「旧帝大」に東京工業大学・一橋大学・神戸大学を加えた10大学が「難関10大学」と、その中の東大・京大・阪大・東工大・一橋大が「超難関5大学」と呼ばれている。
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