修道学園通信Vol.97
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The Shudogakuen News vol.972先日ラジオから、興味深い話題が放送されていました。東日本大震災の大津波で、多くの犠牲者が出たある地区の住民や漁師達が、復興に向けた新たな防潮堤の建設計画に「海が見えなくなる」と反対し、その姿をドキュメンタリー映画にした監督がインタビューに答えていました。監督は映画の撮影を通じて「自然に対して謙虚であろうとする気持ちを呼び起こされた」と話していました。その監督は、溢れるほどの便利な物に囲まれ、徹底して合理的に生きている自分とは全く違った価値観を、その地区の人々の生活に感じたのだと思います。その監督の制作した映画には、私たちが忘れていた何か大切なものが提示されているような気がします。18世紀の産業革命では農業社会から産業社会へ大きく変化しました。農業社会では自然に翻弄される不安定な状況の中で、人々は真摯に自然と対峙してお互いに創造力を発揮し合い協働していました。前述の監督が提示した価値観の原形とも言えます。ところが産業社会では機械的な型どおりの運用を遂行できる能力が求められていったのです。学校教育においてもひたすら大人達が作った「正解」を教えられ、その「正解」を出すための知識や精神の蓄積に力が注がれていました。今の大人達が受けてきた教育です。しかし、現在、時代は激変し、私たちの眼前には「正解」のない難問が数多く対峙しています。ふと頭に浮かぶだけでも、環境、食糧、資源など、国境を越えてそれぞれの国が協働し連帯していかないと解決できない地球規模の難問は山積しているのです。修道の建学の精神は「世に有為な人材」を育成することです。現代の新しい学力観が提唱され、グローバル人材教育が注目されています。この学力観については、一部の見識者からは、合理主義、産業的なマンパワーを重視する経済界の要請が根底にあり、教育の世界では重視すべきではないという反論もあります。しかし、「正解」のない難問を解決するには、今までにはない新しい知と能力が必要であることは明白です。そして、その能力を発揮できる人材を育成していくのが修道のミッションであるとも考えています。前述の映画監督が注目した地区の人々の、津波を防ぐことができる巨大な人工物を作ることを正解としていない感性、また、畏敬を覚える自然の中でお互いが工夫し協働して生活することを是とする精神、私たちの前途の羅針盤のような気がしています。農業社会の時代に原点回帰するという意味ではなく、今後極度に発展していくであろう新しい文明の中で、今までの「正解」に対して、全く新しい発想から生まれた公式によって「別解」を導く必要があるということだと考えています。修道の教育にも、今までの「正解」に敬意を表しながら、世の進運に先駆けた「別解」を創造していく時期はすでに到来していると自覚しています。−修道の「別解」−校 長 田原 俊典校長挨拶新教頭補佐挨拶教頭補佐 上田 道浩教頭補佐の主な役割は文字通り、校内外の多岐に渡る業務を担う中学教頭・高校教頭をサポートすることですが、それに加えて私自身が自らの責務として意識しているのは、「繋ぐ」という行為です。私たち教育に携わる者は、家族はもちろんのこと、自分以外の多くの人々もまた、目の前にいる生徒のみなさんの成長に寄り添っているという事実を肝に銘じなければなりません。修道においても、生徒一人ひとりが、6年間あるいは3年間の学級担任・授業担当者・班活動の指導者、そして同級生・先輩・後輩との関わりのなかで、自らを鍛えていきます。私自身が生徒・保護者・教職員とのコミュニケーションを密にすることによって、「人と人を繋ぐ」「仕事と仕事を繋ぐ」役割を果たしていきたいと考えています。「生きる力」の捉え方に大きな変革が求められている現在だからこそ、多くの人々との関わりを意識しながら、未来の「リーダー」として社会に貢献する意志と力量を身につけた人物が、この修道からこれからも巣立っていけるよう、努力を重ねていきます。教務といえば、授業やテストの運営、成績処理、行事予定の作成というイメージが強い部署かもしれません。確かにこれらに関する業務は重要で、学校の根幹をなすものですが、学校そのものが「グローバル化」の波とともに変革を迫られています。「ICT(情報通信技術)の進歩」は、黒板を変え、教科書を変えようとしています。ハード面が整えられた後は教務部が主体となり、ソフト面の充実を図ります。「道徳の教科化」は、これまでの読み物道徳から、考える道徳・議論する道徳への転換を目指しており、すでに育成部と連携し、問題解決学習や体験学習のコンテンツの収集に入っています。「高校基礎学力テスト」「大学入学学力評価テスト」という2つの新テストについても、進路部と連携して対応を行います。教育界は大きく変わろうとしていますが、これからも世の進運に先駆ける修道であり続けるために、力を尽くして参る所存です。教務部長 藤澤 康雄「育成部は何をする部なのか」と聞かれることがよくあります。私は答えに困ってしまうのですが、それは生徒のみなさんが修道で身につけるものは一言で言い表せないほど多いからです。修道で身につけることといえば、まず学力が思い浮かぶと思います。しかし、それは修道で学ぶことの一端に過ぎません。たとえば、多くの人と触れ合う中で、道徳やマナーを学びます。学びは人を通して学ぶだけでなく、本などのメディアを通しても学んでいきます。さらに、オーストラリア研修やスキルアップ講座をはじめとする国際理解教育によって、国際感覚を身につけていきます。そうした多岐にわたる修道での学びを、育成部はサポートしてまいります。育成部とは、図書館・国際理解教育・道徳・平和学習など、まさしく「知徳併進」に関わる部なのです。それに加え、奨学金のお世話、広報活動などを行っていきます。生徒の皆さんが「さすが修道生」と言われるようになるように努力していきたいと思います。よろしくお願いいたします。育成部長 磯辺 悌志新教務部長挨拶新育成部長挨拶

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